以心会

痔について


外科部長:安藤拓也


はじめに


痔といわれてみなさんはどんな病気を連想されるでしょうか? お尻の穴(肛門)が痛い、肛門から血が出る、肛門にいぼが出来る、などがあるかと思います。そして出来る場所が肛門であるだけに、なったら恥ずかしい病気であると。このため自己診断をして売薬を買ってなおしたり、放置しておいたりしてかなり悪化してから診察を受ける方が多いようです。実際には多くの患者さんが痔の悩みをもっておられ、日本人の 3 人に1 人が痔を持っていると言われます。


痔の種類


痔とは、肛門のいろいろな疾患の総称する病気で、「いぼ痔」「切れ痔」「痔ろう」の3種類に分けられます。


1.いぼ痔(痔核)


図1

痔核は最も多い痔で、全患者数の 50%以上を占めます。長年の便秘や下痢、排便習慣などで、肛門周辺にある毛細血管が拡張して静脈瘤となり、肛門周囲の組織が弛んで膨らんで、「いぼ痔」となります。図1のように、歯状線(肛門と直腸の境目)より奥の直腸側にできるものを「内痔核」、外の肛門側にできるものを「外痔核」といいます。排便時にいぼ痔の表面が傷ついて出血したり、いぼ痔が外に飛び出すようになります。ひどくなると手で押し込まないと戻らなくなります。


図2


2.切れ痔(裂肛)


20 〜40 歳代と若い世代に多くみられます。便秘で硬い便を無理に出そうとすると、肛門の上皮が傷つき裂けて「切れ痔」が起きます。ひどい下痢の時に起こることもあります。排便後に強い痛みと少量の出血があります。切れ痔が慢性化すると、潰瘍となったり、肛門が狭くなってしまうこともあります。


3. 痔ろう


肛門の内側にある肛門腺から細菌が感染して化膿すると、肛門の周りに膿がたまり、「肛門周囲膿瘍」の状態となります。膿瘍が自然に破れるか、切開して膿が出たあとも、細菌が入った部位から膿が出た部位までの通り道がトンネル状に残ります。これを「痔ろう」といいます。


痔の治療


1.痔核(いぼ痔)


痔核は徐々に進行していきます。内痔核では、I 度やII 度のうちは軟膏や内服薬での治療が中心ですが、III 度やIV 度となり出血や脱出がひどくなると手術が必要になります。また急に血栓(血の塊)ができる血栓性外痔核では、痛みが強い場合には切開して血栓を取り除きます。


2.裂肛(切れ痔)


ほとんどの場合は軟膏や内服薬で治療します。便秘が原因となることが多く、排便の調整も必要です。しかし慢性化してくると、肛門が狭くなり、さらに切れやすくなります。切れる→なおる→固く狭くなる→切れやすくなるという悪循環をくりかえしますので、手術が必要になります。


3.痔ろう


痔ろうは放置しておくと排膿や出血を繰り返して、だんだん悪化していきます。薬だけで治ることは無いので。手術が必要となります。長期間繰り返していると、ごく稀ですが痔ろうの部分に癌ができることがあります。


痔核( いぼ痔) の新しい治療


最近では、切らずに痔核を治す硬化療法(ALTA 療法)もできるようになりました。I度からIII 度の内痔核が対象となります。さまざまな手法を組み合わせて治療ができるようになり、入院期間も短縮することが可能になりました。


しかし、すべての痔核が硬化療法で治療できるわけではありません。痔核がひどい場合や外痔核が主体の場合には、従来の手術治療が必要になります。


おしりの調子が悪かったり、痔でお悩みの方は、恥ずかしがらずに、ぜひ当院医師の診察を受け、ご相談ください。