以心会

骨粗鬆症

医師:溝口

骨粗鬆症のお話

骨粗鬆症とは

皆さんは「骨がもろい状態を骨粗鬆症」と認識されておられるでしょうか。骨粗鬆症では、つまずいたり転倒しただけで、手首の骨や大腿骨が折れてしまう、また背骨が徐々につぶれて(圧迫骨折)慢性的な腰痛の原因になるなど、健康で丈夫な状態ではあり得ないことが起こります。従って単に「骨がもろい状態」ではなく、「骨の病的な老化」であると認識したほうがよいでしょう。

骨粗鬆症の原因

骨粗鬆症の原因には、閉経に関連するもの、甲状腺疾患に伴うもの、薬剤によるもの、先天性の病気によるものなどあります。高齢男性にも骨粗鬆症の方はおられますが、女性の罹患者は男性の約3倍で、閉経後骨粗鬆症は国内に868万人程と推計されています。年齢が上がるにつれて骨粗鬆症は増え、大雑把にいうと75歳以上の約半数が骨粗鬆症なのです。

骨粗鬆症の診断

診断には骨密度値が利用されます。YAM(若年成人平均値=20歳から40歳までの健康成人女性の骨密度平均値)の70%を下回った場合、骨粗鬆症と診断されます。骨はいつの年代においても、絶えず作られ、また、同時に吸収されています。しかし高齢になるにつれて骨形成と骨吸収のアンバランスが生じ、骨密度は低下していきます。


特に女性の場合、閉経期の頃より急速に低下します。女性ホルモンの低下や、カルシウム、ビタミンD欠乏なども関与し骨が脆弱になってしまうのです。


骨密度測定の検査には、定量的超音波法(QUS)による踵骨の骨量測定や二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による腰椎、大腿骨などの骨量測定が広く用いられています。この検査は比較的簡便に行えるものですが、検査の特性から各施設により用いられる方法は様々です。そのほか骨量の測定以外に血液検査もあります。治療に用いる薬物を選択するためや、治療の効果の推定などに利用されるものです。

骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症の治療には運動療法、食事療法、薬物療法があります。運動療法については骨粗鬆症の予防の意味合いが強いですが、成長期におけるスポーツ歴が、閉経前後の骨量にまで反映されることが、多くの疫学的調査により示されています。食事療法ではカルシウムを一日800mg以上摂取することが勧められています。カルシウムは乳製品に多く含まれ、吸収も良好です。そのほか豆腐や小魚、野菜では小松菜や春菊、チンゲンサイなどに多く含まれています。


薬物療法にはカルシウム製剤、エストロゲン製剤、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、ビスフォスフォネート製剤などがあり、それぞれの薬の特性と病状に合わせて処方されます。

骨粗鬆症は特に自覚症状のないまま忍び寄ってきます。はじめにも申し上げたように、骨粗鬆症の方が転倒してしまった場合、体を支える重要な、本来丈夫な骨が弱い力で簡単に折れてしまうのです。骨折した場合、手術などで治療を行いますが、骨折する前の状態にまで回復する事は困難です。多くの方は日常生活を著しく制限され、寝たきりになってしまう場合もあり、生命予後にも影響を及ぼします。


繰り返しますが、骨粗鬆症は単に「骨がもろい状態」ではなく、明らかな疾患なのです。


骨粗鬆症についての認識を深め、予防、治療を積極的に行っていただきたいと考えます。

骨粗鬆症予防の食事

骨粗鬆症予防のためには

骨を丈夫にすること、そのために骨の材料となるカルシウムを摂ることが大切です。

骨を丈夫にするポイント

ポイント1

カルシウムの多い食品をとりましょう

カルシウムは乳製品、小魚、豆腐・納豆などの大豆製品、ひじき・わかめなどの海藻類、小松菜・チンゲンサイなどの緑黄色野菜に多く含まれています。中でも吸収率が良いのは、乳製品のカルシウムです。牛乳なら一日に必要なカルシウムの1/3量が含まれる1日200ccを目安に。牛乳の苦手な方は、料理中への使用、ヨーグルト・チーズの利用がおすすめです。

ポイント2

薄味料理にしましょう

塩分をとりすぎると、尿と一緒に排泄されるカルシウム量が増えてしまいます。

ポイント3

ビタミンD・ビタミンKをとりましょう

ビタミンDはカルシウムの吸収に役立ち、干し椎茸・魚類に多く含まれています。


ビタミンKは、骨の形成・保護に役立ち、納豆・ブロッコリーなどに多く含まれています。

レシピ

カルシウム豊富なちりめんじゃこ、ビタミンKの豊富な納豆。


今日の食事にいかがですか?

じゃこ納豆

材料(2人分)

納豆2パック
ちりめんじゃこ大さじ1〜2
ねぎ適量


材料すべてを器に入れて混ぜるだけの簡単レシピです。
タレを使わず、ちりめんじゃこの塩分で食べるのがおすすめです。豆腐にのせるとさらにカルシウム量が増えます。