以心会

広報誌「エヌアイだより」第 92号

病院マイクロバス減便のお知らせ

病院マイクロバスを2025年8月1日より減便いたします。

病院発知立発
月~金月~金
800 4500 45
3030915 4515 45
00 3000 301015 4515 45
00 3000 30111515
00 3000 3012
00 5500 5513
14
3015
16
3017
18

◎は土曜日のみ運行  /  △は土曜日運休

減便のお知らせ

 枠の便を、2025年8月1日より廃止します。


訪問看護ステーションなかの 閉鎖のお知らせ

JED Projectへの参加について

面会のご案内

面会のご案内

面会が出来る時間

平日13時~19時
土・日・祝日13時~18時

面会者の入り口案内


休診日は正面玄関を施錠しています。ご面会は、西側通用口からお入りください。


面会の方へのお願い


  • 病室には患者さんのお名前を掲示していません。
  • ナース・ステーション窓口で「面会申込用紙」に必要事項を記入していただきます。
  • 面会時間内でも、診療やその他の都合により、お待ちいただいたりお断りする場合もありますのでご了承ください。
  • 個室以外での面会は、できるだけ談話室をご利用ください。
  • お子様連れや大勢での面会はできるだけご遠慮ください。
  • 病棟での携帯電話の使用はご遠慮ください。
  • 電話による入院患者さんに関するお問い合わせ等については、お答えできませんのでご了承ください。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLDについて)

副院長:安藤拓也

 非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD(ナッフルディー))というのは聞き慣れないと思いますが、アルコール以外が原因の脂肪肝の総称で、過食と運動不足による肥満が主な原因になります。肥満人口の急増、生活習慣の変化により、NAFLDの患者さんは増加しており、最も頻度の高い肝疾患になっています。今回は、脂肪肝のなかでも非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)について説明します。

NAFLDとは

 脂肪肝は様々な原因により肝臓の細胞内に中性脂肪が過剰に蓄積した状態です。アルコールの飲み過ぎが原因であるアルコール性脂肪肝と、アルコール以外が原因の脂肪肝(NAFLD)に分けられます。NAFLDの患者さんのアルコール摂取量は、男性で 1 日 30 g 未満,女性で 1 日 20 g 未満になります。男性ではビールなら750mL(大瓶1本強)、日本酒なら1合半、ワインではグラス2杯半、ウイスキーではダブルで1杯半よりも少ない1日の飲酒量(女性ではその2/3以下)になります。
 NAFLDの80~90%は、病態がほとんど進行しない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver ; NAFL)ですが、10~20%は肝臓の組織に炎症や線維化(硬くなる)が進行する非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis ; NASH)と呼ばれ、肝硬変や肝臓癌に進行する危険性があります。単に肝臓に脂肪がついただけと軽く考えずにしっかり治療することが重要です

原因

 NAFLDはメタボリックシンドロームの肝病変です。主な原因は過食と運動不足による肥満であり、多くは糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病を合併しています。食事では、総エネルギー摂取量、糖質や脂質の摂取量が多いと、肝臓に脂肪が沈着しNAFLDを発症しやすくなります。特に糖質のなかでも、ソフトドリンクや嗜好品からの果糖やショ糖などの単純糖質の摂取が過剰であると、肝細胞の脂質合成が促進します。
 近年の肥満の増加を背景にNAFLDは増加しており、健診では男性の約40%、女性の約20%に見つかります。年齢は、男性は中年層、女性は高齢層に多い傾向であり、女性は閉経後に増加します。肥満、特に内臓脂肪の蓄積と相関が強く、皮下脂肪型肥満の場合は約30%、内臓脂肪型肥満の場合は約50%に脂肪肝の合併がみられます。

診断

 脂肪肝には自覚症状はありません。日常診療においてアルコールをあまり飲まない人で、超音波検査、腹部CTなどの画像検査で脂肪肝を認めれば、NAFLDを疑います。
 特に超音波検査は簡便であり、診断には有用です。


超音波検査:肝臓が脂肪で白く写ります

CT検査:肝臓が脂肪で黒っぽく写ります


 血液検査では、AST、ALTなどの肝機能の軽度上昇が特徴であり、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎や自己免疫性肝疾患などの他の肝臓病が無いことを確認できれば、NAFLDと診断します。
 NAFLD と診断された患者の36.2%がメタボリックシンドロームを合併しており、90%以上の患者さんで肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病を合併しています。


治療

 NAFLD治療の原則は、食事療法・運動療法による肥満の改善が重要です。
 体重を7%以上減量すると脂肪肝が改善します。少しずつ標準体重を目指すことをお勧めします。 
 運動療法は、歩行やジョギングなどの有酸素運動による体重減少が有効です。1日30分以上の有酸素運動を週に3、4回行いましょう。筋トレなどのレジスタンス運動も有用で、筋肉量が増えて基礎代謝が高まるので、体重減少が見られなくても脂肪肝が改善します。
 食事療法では、カロリー制限が重要で、炭水化物や脂質を制限した適切な量の食事を心がけて体重を減らしましょう。過剰に摂取された糖質は中性脂肪に変換され、肝臓の脂肪が増えます。糖質の中でも特に果糖の過剰摂取は肝臓の線維化と関連しており、果糖の多いソフトドリンク、果物などは減らしましょう。また多価不飽和脂肪酸(魚油、EPA・DHA、コーン油)、一価不飽和脂肪酸(オリーブ油、ナッツ類)は多く摂取した方が良いとされています。
 食行動の改善も有効であり、「早食い」、「朝食を食べないこと」、「遅い夕食、夜食」も体重を増加させる原因になるので、改善が必要です。
 薬物治療には、確立された治療法はありません。糖尿病、高血圧、脂質異常症などを合併している場合には、その薬物治療が重要であり、NAFLDの治療としても有効です。肥満や基礎疾患のない場合には、抗酸化作用をもつビタミンE製剤を使用することがあります。

おわりに

 NAFLD の患者さんはメタボリックシンドロームの合併が多いため、動脈硬化による心血管障害や脳血管障害が大きく影響します。また長期間にわたる肝臓の慢性炎症によって肝臓が硬くなり、肝硬変へ進展し、肝臓に癌が発生することもあります。NASH が原因である肝硬変から年率2%で肝臓癌が発生すると言われています。自覚症状はなく、知らない間に病状が進行してしまう危険性もありますので、年に1回は健康診断や人間ドックで血液検査や超音波検査を受けることが重要です。また肥満の人、糖尿病や脂質異常症で治療を受けている人も、定期的に血液検査や腹部超音波を行い、脂肪肝の有無や肝機能の数値を調べることをお勧めします。
 脂肪肝は肝臓癌の原因にもなる危険性もありますので、肝臓に脂肪が付いただけと軽く考えずに、食事療法・運動療法を行って肥満を改善することが大切です。


膵臓癌 早期発見のために

医師:上田 悟郎

はじめに

 膵臓はみぞおちの下あたりにある、オタマジャクシのような形をした臓器で長さは12~20cmほどです。



膵臓の大きな働きとして、体の内分泌機能と外分泌機能を調整しています。内分泌機能とはインスリンのように血中に放出されて血糖を調整する作用のことをいいます。また外分泌機能とは膵液という食べ物を消化する酵素が含まれた消化液を消化管に放出し食べ物の消化を助ける作用のことをいいます。
 膵臓癌の約9割は膵液が分泌される膵管上皮(膵管の内側の細胞)から発生します。また頻度は少ないですが、消化酵素を作る腺房細胞から発生する腺房細胞癌や、ホルモンを分泌する細胞から発生する神経内分泌癌があります。
 膵臓癌は非常に診断と治療の難しい癌で、診断がついた段階で手術できる患者さんはわずかに約20%に過ぎません。また切除できても術後の再発率が高く、術後の5年生存率は20-40%と不良です。また膵臓癌と診断された患者さんの5年生存率はわずか10%前後といわれています。その理由の1つとして、膵臓癌の早期発見の難しさに原因があります。

症状

 膵臓癌は早期ではほとんど症状がなく、症状が出現する頃にはかなり進行しています。膵頭部(オタマジャクシの頭側)に癌が発生すると皮膚や目が黄色くなる黄疸が生じることがありますが、膵体尾部(オタマジャクシの尻尾側)に発生した癌はかなり大きくなるまで症状が出にくいです。そしていずれの部位にできた癌も癌が大きくなり、周囲の組織に広がると、ようやく腹痛や背部痛として症状が出現します。また体重減少や、食欲減退、糖尿病の発症(悪化)等もこの頃から出現します。しかし、このような症状が出現した頃には手術で切除することができない状態になっています。
 膵臓癌を早期発見するためには、まず膵臓癌の発症リスクを知って自分にそのリスクがあるかどうかを知ることが重要です。

膵臓癌のリスク因子

①家族歴:家族に膵臓癌のある人がいる。
②糖尿病:約2倍リスクが高くなる。特に最近発症した糖尿病や、糖尿病の急な悪化は膵臓癌が併存している可能性がある。
③喫煙:約1.7-1.8倍リスクが高くなる。
④肥満:約1.3-1.4倍リスクが高くなる。
⑤飲酒:約1.1-1.3倍リスクが高くなる。
 (1日あたりビール 約500~1000ml摂取)
⑥遺伝性膵炎:アルコールや胆石症以外が
 原因の膵炎を若い時に発症したことがある。
⑦慢性膵炎:慢性膵炎と診断されて2年以上経過後に膵臓癌の発症が増える。
⑧膵のう胞:膵臓の内部や周囲にできる様々な大きさの「袋」が時間経過とともに大きくなり、癌に進行することがある。膵のう胞は膵臓癌のリスク因子として経過観察を行う必要がある。

検査

 膵癌の早期発見のために最近、腹部超音波検査の重要性が注目されています。腹部超音波検査はお腹に超音波を発信する装置をあて、内臓からの超音波の反射波を読み取り、お腹の画像をモニターに写す検査です。腹部超音波検査は消化管ガスの影響や体型(肥満)によって、が難しいことがありますが、比較的体への負担が少なく安全な検査です。
 前述の膵臓癌のリスク因子、症状(腹痛、黄疸など)、採血での膵酵素・腫瘍マーカーの異常を認めた場合には積極的に腹部超音波検査を行うことが推奨されています。また健診や人間ドックでも腹部超音波検査を行うことができるので、積極的に活用した方がよいと思います。
 腹部超音波検査で膵臓に異常を認めた場合には、さらに超音波内視鏡(EUS)やCT、MRIなどの画像検査や血液検査を追加して診断を進めていきます。
 もし、膵臓癌と診断された場合には、周りの臓器への広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無によりステージ(進行度)が決まります。

治療

 膵臓癌の治療には主に癌を切除する「手術」と抗がん剤を使う「化学療法」があります。治療方法は癌のステージ(進行度)によって決まり、組み合わせて行う場合もあります。最近では、手術前に抗がん剤を使用し、癌を小さくしてから手術を行い、さらに手術後に再発を予防するための抗がん剤を追加で行う治療方法もあります。また手術治療でも最近では、傷の小さい腹腔鏡手術やロボット手術も健康保険に適応され、今後これらの手術も増えていくと予想されます。

おわりに

 膵臓癌は未だに予後が厳しい疾患ではありますが、早期発見、早期治療ができるように自分自身のリスク因子等を理解し、積極的に腹部超音波検査を活用しましょう。


アニサキス症

医師:神谷 賢吾

アニサキス症とは

 アニサキス症は、アニサキスが胃壁や腸壁に刺入して引き起こす寄生虫症です。アニサキスはイルカ、クジラ、アザラシなどの海洋に生息する哺乳類を終宿主とし、これらの胃に寄生する線虫です。虫体の多くは、長さが2~3cm、幅は0.5~1mmぐらいで、白色で少し太い糸のように見えます。
 ヒトへの感染源となる魚介類は、日本近海で漁獲されるものでも160種を超えるとされています。「しめ鯖」などのサバでの感染が最も多いですが、この他アジやイワシ、イカ、サンマなどが感染源になる魚介類として注意が必要です。

疫学

 感染源が魚介類の生食であるため、かつては11~4月の冬季に多くみられましたが、鮮魚の流通の発達などもあり近年では6~9月の夏季も含め1年を通して発生しています。本邦では年間~400件台の届出報告がありますが、届出をされていないものも含めると年間推計で7,000件に上るとの報告もあります。
 日本人は寿司・刺身などで魚介類を生食する習慣があることから、海外に比べ非常に多くみられます。
 アニサキスが感染する部位は、胃が90%以上と圧倒的に多く、次いで小腸、十二指腸となっており、ときに咽頭、食道や大腸にも虫体が確認されることがあります。

症状

 感染部位により胃アニサキス症と腸アニサキス症に分けられます。
 胃アニサキス症では摂取から8時間以内、腸アニサキス症では数時間~数日以内に、持続する激しい腹痛や悪心・嘔吐が起こり腹膜炎の症状を伴ったり、腸閉塞や腸重積を起こすこともあります。また5%程度の割合でアレルギー反応として発熱、蕁麻疹などの全身症状を伴うこともあります。また、症状が軽微で自覚症状も無く、健診などで偶発的に見つかることもあります。

診断

 最も重要なのは発症前の生鮮魚介類摂取を確認して本症を疑うことです。摂取歴と症状からアニサキスの感染を疑えば、まず上部消化管内視鏡検査を行います。虫体が確認されれば確定診断となります。感染は1匹とは限らず、同時に複数の虫体が見つかることもあります。刺入部周囲の胃粘膜は浮腫やびらん、点状出血などを起こし、炎症が強いと胃潰瘍などを伴うこともあります。
腸アニサキス症では内視鏡検査で調べられる範囲でないと虫体の確認は困難であり、病歴から疑われた場合、他の病気との鑑別のために腹部CT検査などを行います。CTでは小腸の壁肥厚、腸閉塞所見や腹水などがみられることがありますが、腸アニサキス症と診断することは難しいです。

治療

 アニサキス症の最も確実な治療は、内視鏡で粘膜に刺入している幼虫を確認し、生検鉗子で摘出することです。通常、虫体を除去すれば腹痛は速やかに消失します。しかし、上腹部症状が持続する場合や、腸閉塞症状がみられる場合は、胃以外の消化管で感染している可能性もあり、入院治療を行います。
 アニサキスはヒト体内では生きていけず1週間程度で自然死滅しますので、虫体が摘出できなくても保存的治療で基本的には治癒します。



上部内視鏡画像

予防

 アニサキスは60℃で1分、70℃以上では瞬時に死滅します。冷凍処理によりアニサキス幼虫は感染性を失うので、魚を-20℃以下で24時間以上冷凍することは有効です。酸には抵抗性があり、「しめ鯖」のように一般的な料理で使う程度の食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても死ぬことはありません。加熱調理するか、十分に冷凍してから調理することが効果的です。

 アニサキス症は上記の予防策を守れば基本的に防げる病気です。とは言え、新鮮な魚介類を生で食べるという文化は日本において慣れ親しんだ文化であり、美味しさを求めるには解凍食材では…と悩ましく思う方もいるかもしれません。
 感染しうる条件を頭に置いておくこと、疑わしい食事後に症状を起こした際には、受診の際にその食事内容を伝えることが速やかな診断、治療のために大切です。


過敏性腸症候群(IBS)

外科副部長:前田 頼佑

 様々なメディア等に取り上げられ、一般的にも知名度が高まった過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome、以下IBS)。炎症や腫瘍といった特定の原因がないにも関わらず腹痛と便通異常を起こす疾患で、約10人に1人が罹患していると言われており、消化器病院である当院には毎日多くのIBS患者様が受診されます。

症状

IBSの診断基準は以下の通りです。
◆腹痛が
◆最近3か月の中の1週間につき少なくと  も1日以上を占め
◆下記の2項目以上の特徴を示す
 ① 排便に関連する
 ② 排便頻度の変化に関連する
 ③ 便形状(外観)の変化に関連する
 つまり、腹痛に下痢や便秘、頻回の排便などを伴い、3か月間で週に1日生じる場合にIBSと診断されます。ただ、前提として大腸癌や潰瘍性大腸炎など他の消化器病による症状ではないことが必要なので、大腸内視鏡検査や血液検査などを行い他の消化器病を除外しておくことが推奨されます。
 IBSは硬い便が多い便秘型(IBS-C)、軟便や水様便が多い下痢型(IBS-D)、便秘も下痢もある混合型(IBS-M)、これらに分類されない分類不能型(IBS-U)に分けられます。
それぞれの型で治療法が異なるため、IBSと診断されたら便性状による型を決めることが重要です。

原因

 有病率に関して性差では女性の方が多く、年齢では若年者で多いとされています。
 IBSの原因として考えられているものはいくつかあり、その一つがストレスです。人間はストレスを感じると脳が反応し、それに伴い脳から腸にストレス刺激が与えられます。腸へのストレス刺激は腸の運動が亢進し腹痛や便通異常を引き起こします。これは脳腸相関と呼ばれており、IBSの原因として重要な部分を占めています。IBS患者様は日常生活で起きる事に対して悪く解釈する傾向があり、そのストレスが症状の重さにも関連しているとされています。
 その他の原因として腸内細菌の関与が挙げられます。急性胃腸炎、感染性腸炎にかかった後にIBSを発症される患者様がおり、これは腸内細菌の変化が原因と考えられております。胃腸炎後約10%の方がIBSを発症し、女性、若年者、心理的問題、胃腸炎の程度が強いことがリスクとなります。
 他にも腸管粘膜や神経系、ホルモンの異常、遺伝などが原因として考えられています。

検査

 IBSは症状で診断する疾患ですので、IBSと診断するための検査はありません。しかし、前述の通りIBSの症状が他の消化器病から起きていることもあるため大腸内視鏡検査や腹部CT検査、血液検査、便検査などを行い除外することが推奨されます。
 また、腹部超音波検査で腸管運動を評価したり、MRIで脳腸相関を評価するなどの研究が行われており、将来的には診断に活用される可能性があります。

治療

 IBSの治療は多岐に渡りますが、必ずこれで治るという治療はなく、場合によっては複数の治療を組み合わせる必要があります。また、症状が落ち着いたとしても治療中止で再燃することもあるため、治療期間が長くなる傾向があります。

食事療法

 一般的には規則的な食事、十分な水分摂取が症状を軽減します。また、脂質、カフェイン類、香辛料、乳製品は症状を悪化させる可能性があります。欧米では小腸で分解・吸収されにくい食品類を避けることが有効と報告されています。(低FODMAP食)

生活習慣の改善

 ウォーキング、ヨガ、エアロビクスなど適度な運動が症状を改善します。睡眠や飲酒は一部関連性が示唆されていますが、明確なものは確認されていません。

薬物療法

 第一段階として全ての分類型に共通し、まず、消化管機能調節薬(マレイン酸トリメブチン等)、プロバイオティクス(整腸薬、ビフィズス菌等)、高分子重合体(ポリカルボフィルカルシム)を使用します。下痢型には5-HT3拮抗薬(ラモセトロン)、便秘型には粘膜上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)を使用します。これらの薬は単剤使用が基本ですが、症状の改善がなければ併用することも可能です。これらの薬剤で改善がなければ下痢型には止瀉薬(ロペラミド、ベルベリン等)、腹痛には抗コリン薬(チキジウム、ブチルスコポラミン、メペンゾラート等)、便秘型には下剤を併用します。また、漢方薬(桂枝加芍薬湯、半夏瀉心湯、大建中湯等)や抗アレルギー薬が有効な場合もあります。
 上記の治療が無効の場合、第二段階に移ります。症状がストレスや心理的異常に関与する場合、抗うつ薬や抗不安薬を使用します。ストレスや心理的異常の関与が乏しければ再度検査を検討し、第一段階で使用しなかった便秘治療薬や下痢治療薬、抗うつ薬を使用します。

心理療法

 認知行動療法、リラクゼーション、催眠療法、マインドフルネス療法、ストレスマネジメント、力動的精神療法等があり、これらは薬物療法が無効だった場合に第三段階として行われますが、全ての医療機関で実施されているわけではありません。 認知行動療法、リラクゼーション、催眠療法、マインドフルネス療法、ストレスマネジメント、力動的精神療法等があり、これらは薬物療法が無効だった場合に第三段階として行われますが、全ての医療機関で実施されているわけではありません。

最後に

 先述した通りIBSに特効薬は無く、継続治療が必要な場合が多いです。患者様と医療スタッフとの信頼関係が治療に大きく影響しますので、症状でお悩みの方は是非ご相談ください。


食道癌について

副院長:安藤 拓也

食道とは

 食道は、喉から胃の入り口までのびる約25~30cmほどの管状の臓器です。食道癌は、食道の内面をおおっている粘膜(扁平上皮)の表面から発生します。大きくなると深く広がっていき、食道の外側の気管や大動脈などにも広がります。食道の壁内にあるリンパ管や血管にがんが侵入すると、リンパ液や血液の流れに乗ってリンパ節や肺、肝臓などの他の臓器へと転移します。


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 食道癌の早期発見は難しく、悪性度は胃癌や大腸癌に比べると高いです。我が国では食道癌と診断される患者さんは男女とも少しずつ増加傾向にありますが、死亡率は横ばいです。年齢は60-70歳代が多く、男性が女性の約6倍多い。食道癌で亡くなられる方は、男性では肺癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌に次いで高く、女性では10番目以下です。

検査

 食道癌を見つけるには、内視鏡検査と消化管造影(バリウム検査)を行いますが、早期癌の発見には内視鏡検査が不可欠です。さらに内視鏡検査時にヨード染色法を併用すると、食道癌はヨードで染色されずに白色の病変として認識され、肉眼では分かりにくい病変を早期発見しやすくなります。また内視鏡から特殊な光を当てて食道の粘膜内の血管などの変化から癌を見つける「狭帯域光観察(NBI)」も早期癌の発見に有用です。


早期癌(通常内視鏡像)


早期癌(ヨード染色像)


早期癌(NBI観察像)


進行癌

症状

 早期癌では自覚症状はほとんどなく、内視鏡検査でたまたま発見されることが多い。癌が進行すると、前胸部の違和感・痛み、食事のつかえ感、声のかすれ、などの症状が出現します。

食道癌の種類

 食道癌には主に扁平上皮癌と腺癌に分けられます。もともと食道の粘膜は扁平上皮ですが、逆流性食道炎の繰り返しで食道下部の扁平上皮が腺上皮(胃の粘膜)に置き換わると腺癌が発生しやすくなります。日本や中国などの東アジアではほとんどは扁平上皮癌で、喫煙と飲酒が最大の発癌要因になります。腺癌は欧米人に多いタイプで、逆流性食道炎、肥満、喫煙と関連があります。日本では扁平上皮癌が約90%と圧倒的に多く、腺癌が約4%程度ですが、今後腺癌の増加が予想されます。

食道癌になりやすい人

 日本に多い扁平上皮癌には「飲酒」、「喫煙」が関連し、その両方の習慣がある人は危険性が高くなります。飲酒も喫煙もしない人に比べ、飲酒者では2.76倍、喫煙者では2.77倍、食道癌のリスクが上がります。さらに飲酒と喫煙を両方する人のリスクは8.32倍に上昇し、飲酒と喫煙の組合せにより食道癌になる危険性がとくに高くなります。
 特にお酒を飲むと「顔が赤くなる」人は注意が必要です。経口摂取した「アルコール(エタノール)」は小腸で吸収され肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)により「アセトアルデヒド」に代謝され、引き続きアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により「酢酸」へと代謝されます。


 アセトアルデヒドは発がん物質であり、顔面や体が赤くなったり、頭痛、吐き気、二日酔いの原因となります。アセトアルデヒドを分解するアルデヒド脱水素酵素(ALDH)のうち2型(ALDH2)の働きが弱い体質の人はアセトアルデヒドを分解する働きが弱く、お酒を飲むと「顔が赤くなる」体質ということになります。日本人の約45%はALDH2の働きの弱い体質とされています。お酒を飲むと「顔が赤くなる」体質の人は、発がん物質であるアセトアルデヒドを分解できずに体内に残りやすいので食道癌になるリスクが高くなります。

食道癌の深達度

 食道壁の粘膜下層までにとどまる癌を「表在癌」、固有筋層より深くまで広がる癌を「進行癌」と呼びます。さらに表在癌のうち粘膜にとどまる癌を「早期食道癌」と呼びます。

治療法

 粘膜表層までの癌にはリンパ節転移がほとんど無いことから、内視鏡治療で根治が可能です。それより癌が進行していると手術治療になることが多く、放射線治療や抗癌剤治療を行う場合もあります。当院では内視鏡治療は行っていますが、食道癌の手術は大がかりで危険性もやや高いので、専門施設に紹介しています。
 最近の内視鏡治療では、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が主流になっています。ESDでは病変周囲の粘膜を切開し、その後粘膜下層に潜り込みながら剥離して病変を切除する方法です。胃癌の内視鏡治療に比べて技術的難易度は高くなり、合併症にも注意が必要です。食道壁は薄いので穿孔(穴が開くこと)すると、重症になる危険性があります。


内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

 早期癌であるがESDが危険と判断された高リスク症例に対しては、内視鏡の先端からアルゴンプラズマを放出して癌を焼き尽くす治療(アルゴンプラズマ凝固法)を行います。

食道癌の予防には

 日本人の場合、酒も飲まずタバコも吸わない人から食道癌はほとんど発生しません。喫煙者は禁煙をして適量の飲酒を心掛けましょう。とくにウイスキーや焼酎のようにアルコール度数が高い酒は食道粘膜を直接障害しやすいので水割りで薄めて飲みましょう。熱い飲み物や食べ物も危険因子になるので、冷ましてから口に入れましょう。野菜や果物の摂取には食道癌の予防効果がありますので積極的に食べましょう。逆流性食道炎のある方は、内服治療にて食道下部の炎症を抑えて食道腺癌の発症を予防しましょう。
 食道癌の早期発見には内視鏡検査(胃カメラ)が有用ですので、喫煙歴や飲酒歴のある方、逆流性食道炎のある方は、定期的に内視鏡検査を受けることをお勧めします。