当院における大腸がん治療実績
副院長:安藤 拓也
2011年から2016年までの6年間に当院では合計602例の大腸がんに対して内視鏡治療または手術治療を行っています。表1に当院で治療を行った大腸がん症例数をstageと初期治療法別に示します。初期治療として内視鏡治療は304例、手術治療は303例に行われています。
stage 0の大腸がんは内視鏡治療で治癒が得られるため、stage 0の大腸癌213例のうち201例は内視鏡治療を行いました。しかし12例では内視鏡治療が困難であり手術を行っています。また内視鏡で切除した大腸がん病変を病理検査(顕微鏡検査)にて調べますが、(粘膜より深部の)粘膜下層への1000μm以上の浸潤(広がり)や脈管浸潤などを認めた場合には、リンパ節に転移している可能性があり追加手術が必要になります。当院で内視鏡治療を行った早期大腸癌304例のうち50例に対して追加手術を行っています。追加手術を行った50例のうち43例はリンパ節転移を認めませんでした(stage 1)が、7例(14%)にはリンパ節転移を認めたためstage 3でした。
stage | 合計 | 内視鏡治療 | (内視鏡治療から追加手術になったもの) | 手術 |
---|---|---|---|---|
0 | 213 | 201 | ( 0 ) | 12 |
1 | 165 | 96 | ( 43 ) | 70 |
2 | 89 | 0 | ( 0 ) | 88 |
3 | 120 | 7 | ( 7 ) | 113 |
4 | 15 | 0 | ( 0 ) | 15 |
602 例 | 304 例 | ( 50 例 ) | 298 例 |
表1 当院で治療した大腸がんのstage別の病変数 (初期治療法別)
初めから手術を行った298例に、内視鏡治療後に追加手術を行った50例を加えると、348例に対して手術を行っています。大腸癌の浸潤の深さ(深達度)が粘膜と粘膜下層にとどまるものは早期癌といいますが、固有筋層より深く浸潤するものは進行癌といいます。stage0とstageIの一部が早期癌に該当します。
stage | 手術数合計 |
---|---|
0 | 12 |
1 | 113 |
2 | 88 |
3 | 120 |
4 | 15 |
348 例 |
表2に到達法別の手術件数を年毎に示します。
早期癌に対してはほとんどの場合腹腔鏡手術で治療していますが、進行癌や直腸癌では開腹手術で行う場合も多くあります。
年 | 手術件数(全体) | 腹腔鏡手術 | 開腹手術 | バイパス・ストーマ |
---|---|---|---|---|
2011 | 58 | 37 | 19 | 2 |
2012 | 42 | 23 | 17 | 2 |
2013 | 59 | 36 | 22 | 1 |
2014 | 65 | 38 | 26 | 1 |
2015 | 65 | 30 | 35 | 1 |
2016 | 59 | 26 | 33 | 0 |
348例 | 190例 | 152例 | 7例 |
表2 到達法別の大腸癌手術件数
また直腸カルチノイド(神経内分泌腫瘍)に対する内視鏡治療を6年間で53例に対して行っており、すべて深達度は粘膜下層(SM)であったが、病理検査結果(顕微鏡検査)にて追加手術を2例に対して行なっており、1例にリンパ節転移を認めています。
当院では外科医も内視鏡検査および治療を行いますので、内視鏡治療と手術治療のうちより適切な治療法を内科的および外科的な視点で決めることが可能です。手術の際にも適切な手術術式の選択が可能であり、診断から手術まで一貫した治療を行うことができます。