糖尿病
医師:榊原一貴
糖尿病について
はじめに
2013 年11 月14日の世界糖尿病デーに合わせて、世界の糖尿病に関する調査が報告されました。糖尿病有病者数は2013 年現在で3 億8200 万人であり、爆発的に増え続けています。有効な対策を施さないと、2030 年までに5 億9200 万人に増加すると予想されています。糖尿病有病者のうち、約半数の1 億7500 万人は糖尿病と診断されていません。糖尿病の初期には自覚症状がほとんどないためであり、血糖値の上昇を早期に発見し、予防する事がとても重要です。
日本の成人糖尿病人口は720 万人であり、世界ランキングでは第10 位です。2012 年の710 万人より少しずつ増えています。
糖尿病の合併症
し・め・じ
糖尿病を放置しておくと、体中が過剰なブドウ糖により、いわゆる”砂糖漬け”の状態になります。特に細かい血管の集まっている神経(し)、目(め)、腎臓(じ)は障害を受けやすく、糖尿病特有の合併症を生じます(三大合併症:糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症)。治療しないでおくと、糖尿病の発症時から10 ~15 年でこれらの合併症が生じてきます。この他にも、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、下肢閉塞性動脈硬化症、足の壊疽などの非常に怖い病気の原因となります。
糖尿病の治療
基本は食事療法と運動療法です。これらで十分なコントロールが得られない場合は、薬物療法を行います。薬物療法には飲み薬とインスリン注射がありますが、1 型糖尿病の方は体内でインスリンが作れないため、インスリン注射が必要となります。薬物療法は、食事療法や運動療法が適切に行われていないと、効果が不十分であったり、逆に効き過ぎて低血糖となる危険があります。
糖尿病の薬は、糖尿病自体を治すものではありません。血糖のコントロールを正常化し、合併症を予防、そして進行を防ぐことが目的となります。
新しいタイプの糖尿病治療薬( S G L T 2 阻害薬)
2014 年春より全く新しいタイプの糖尿病治療薬が登場しました。腎臓で尿が作られるとき、糖分は老廃物と共に一旦、血管から排出されます。しかし糖は本来、カラダにとって貴重なエネルギー源であるので、ほとんどが再び体内に戻されます(糖の再吸収)。この再吸収の働きをしているのが、SGLT2 という部分です。新しいお薬は、このSGLT2 の働きを阻害(ブロック)します。再吸収で糖が体内に戻る量を少なくし、過剰になった糖を尿中に排出する事で血糖値を下げます。過食で肥満傾向の方、年齢が若い方、糖尿病と診断されてからの期間が比較的短い方などに良い適応であるとされています。注意しなければいけない副作用もありますので、担当医から良く説明を聞いて頂いた上で服用するようにしてください。