以心会

胃・十二指腸潰瘍

医師:田中達也

胃・十二指腸潰瘍とは

胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは食べ物を消化するための胃酸や消化酵素などによって胃壁が障害され欠損した状態をいいます。すなわち転んだときに肘や膝にできる擦り傷が胃壁にできているような状態です。胃壁の障害の浅いものをびらんといい、深い組織欠損を潰瘍といいます。

症状

げっぷ、悪心、胸やけ、もたれ感、食欲不振、心窩部痛、背部痛、黒色便、吐血など様々な症状があります。

原因

ヘリコバクターピロリ菌の感染、鎮痛剤の内服が原因の大半を占めています。他にはストレスによるもの、潰瘍を起こしやすい薬剤によるもの、潰瘍を起こしやすい他の病気によるものなどがありますが比較的まれです。ストレスだけが原因ではなく、きちんとした原因の究明と治療が重要です。

診断

胃カメラや胃透視( バリウム)で診断します。胃透視では潰瘍の中にバリウムがたまったり、襞(ひだ)が集まったりする所見が見られます。内視鏡では円形~ 楕円形のくぼみがみられます(図1,2参照)。胃癌と区別がつきにくいため胃透視で診断された後でも内視鏡で一部の組織を採取して顕微鏡で検査が必要です。


図1

図2


治療


内服薬による治療を行うことが多いですが、重症の場合には点滴治療、手術などを行うこともあります。ピロリ菌や鎮痛剤といった原因の除去も重要です。

内服治療

主に通院で行うことが多いですが、重症度によって入院で行うこともあります。内服治療は胃酸を抑えるヒスタミンH2受容体阻害剤(商品名:ガスターなど)やプロトンポンプ阻害剤(商品名:タケプロン・パリエットなど)が重要ですが、これに胃粘膜保護剤(商品名:ムコスタ・プロマックなど)を組み合わせて使用します。

点滴治療

内服治療でよくなる見込みの無い重症な方は点滴治療を行います。
胃酸を抑えるヒスタミンH2受容体阻害剤(商品名:ザンタックなど)やプロトンポンプ阻害剤(商品名:タケプロンなど)、創傷治癒促進剤(商品名:ソルコセリル)などを使用します。

内視鏡治療

潰瘍からたくさん出血している場合は内視鏡治療が必要になります。電気止血装置(凝固子)やクリップを使って出血している血管を処理して出血を止めます。内視鏡だけで潰瘍は完治しないため出血が止まった後は入院して点滴治療や内服治療が必要です。

手術治療

点滴治療や内視鏡治療でも治らない場合や潰瘍が大きくなって穴が開いてしまった場合などで行われます。以前より薬が良くなったため昔ほど頻繁に行われなくなってきましたが、現在でも無くなっていない重要な治療法です。穴が開いた場合は大網で穴をふさぐ手術が多いですが(図3、4参照)、穴が大きくてふさげない場合や出血が止まらない場合は胃の3分の2を切除する手術を行います(図5参照)。


図3

図4


図5


潰瘍治療の注意


内服治療の場合は薬を飲まないとよくならないので忘れずに薬を飲みましょう。
食事は消化の良いものを心がけ、香辛料や炭酸飲料、刺激物は避けましょう。
潰瘍治療中は悪影響が出る可能性があるため飲酒やタバコを避けましょう。