以心会

大腸ポリープ

大腸ポリープとは


大腸ポリープとは、大腸粘膜の一部がイボ状に盛り上がり隆起した形状を表す総称のことで、良性や悪性のものがあります。


大腸ポリープは大きく分けて腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分類されます。腫瘍性ポリープには大腸癌や腺腫が含まれ、大腸ポリープの約8 割を占めています。腺腫性ポリープは大きくなるほど癌の割合が増加します。例えば一般的なポリープでは5-9mm 位の大きさでは約2% しか癌がないのに比べ、20mm 以上の大きさになると約半数が癌となります。ポリープの形をした大腸癌は早期癌のことが多いので、小さいうちに検査で発見し、治療することが必要です。


非腫瘍性ポリープには炎症によるポリープや過形成によるポリープなどがあります。炎症によるポリープは潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸に強い炎症を引き起こす病気にかかった後にできることがあります。非腫瘍性ポリープが癌化する可能性はまれです。


1p(有茎型)

1sp(亜有茎型)

1s(無茎型)


症状と検査


大腸ポリープによる自覚症状はほとんどありません。ある程度の大きさになると、便が接触することにより少しずつ出血することがあります。眼で見てもわからないような出血については、便潜血検査により判定を行います。便潜血検査で陽性になった場合には、必ず大腸の精密検査をお勧めしています。


大腸の精密検査には大腸内視鏡検査とバリウムによる注腸検査がありますが、大腸ポリープを早期に発見するためには大腸内視鏡検査のほうが確かです。注腸検査では小さなポリープや平坦型のポリープはなかなか発見できないこともありますし、異常が指摘された場合は、追加で大腸内視鏡検査が必要となります。また大腸内視鏡検査では検査と同時にポリープの切除もできます。

治療

ほとんどの大腸ポリープは内視鏡を用いて切除することができます。切除する際に痛みなどはありません。大腸ポリープを内視鏡的に切除した場合と切除をしなかった場合において大腸癌の発生を調べた研究があります。その結果、ポリープの切除を行った群で大腸癌の罹患率が有意に低く、ポリープ切除により大腸癌が減ることが証明されています。(厚生省班会議、平成7 年度研究報告)


内視鏡により切除を行う方法として、ポリペクトミーや内視鏡下粘膜切除術(EMR)などがあります。それぞれの方法について簡単に説明します。

「ポリペクトミー」


内視鏡の先端からループ状のワイヤーを出して、ワイヤーをポリープの茎の部分にかけて、高周波電流を通電してポリープを切除する方法です。

「内視鏡化粘膜切除術(EMR)」


平坦なポリープなどを切除する際に行う方法です。内視鏡の先端から注射針を出しポリープの下面に生理食塩水などを注射して、病変部分を持ち上げてからポリープにワイヤーをかけて切除します。


ポリペクトミーや内視鏡下粘膜切除術(EMR)による治療後には、切除部からの出血や腸に穴があいてしまう穿孔などの合併症の危険性がありますので、当院では入院にて経過をみています。


切除したポリープは顕微鏡の検査(病理検査)を行い、どのようなタイプのポリープであったかを診断します。ポリープが大腸癌であった場合、癌が大腸表面の粘膜という層の中に留まっているなら追加治療は必要ありません。それ以上に深い層まで入り込んでいると追加で手術が必要となることもあります。

予防

大腸癌には遺伝と関連して発生する家族性大腸ポリポーシス症などがありますが、全大腸癌に占める割合はほんの数パーセントです。それ以外に大腸癌になりやすくなる要因としては、食生活は関連が深いと考えられています。大腸癌はわが国でも最近増加傾向にあり、その原因は食生活の欧米化だろうと推定されています。大腸がんを予防するためには、動物性
脂肪の摂取量を減らし、野菜をたくさんとるように心がけることが重要です。

最後に

大腸ポリープが見つかった方は、ポリープができやすい体質の可能性がありますので、定期的な大腸内視鏡検査を受けることをお勧めしています。


また、大腸癌があっても必ず便潜血検査が陽性になるわけではありません。便潜血検査が陰性であっても大腸内視鏡検査により癌が発見されることはあります。下痢や便秘が続いていたり、ご家族の中で大腸癌を指摘されたことがある方は、一度大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。