炎症性腸疾患
外科部長:安藤 拓也
炎症性腸疾患とは
炎症性腸疾患とは、大腸や小腸の粘膜に炎症や潰瘍を生じる原因不明の病気の総称で、おもに潰瘍性大腸炎、クローン病の2つの病気があります。いずれの病気も厚生労働省より難病(特定疾患)に指定されています。比較的まれな病気ですが年々増加しており、とくに10歳代~20歳代の若年者に多く見られます。原因としては、遺伝的要因、腸内細菌の関与、免疫反応の異常、あるいは食生活の変化などが考えられていますが、まだはっきりとした原因は分かっていません。
下血、下痢、腹痛などが主な症状であり、大腸内視鏡検査、血液検査などの検査にて診断されます。良くなったり(緩解)、悪くなったり(再燃)を繰り返すため長期間の治療が必要になります。現在のところ完全に治るという治療法はなく、良い状態(緩解)を保つことが治療の中心となります。
内服薬や注射による治療が中心ですが、内科的治療で良くならない場合は手術が必要となることもあります。また炎症の主役である活動性の高い白血球を選択的に取り除き炎症を抑える白血球吸着除去療法(GCAP)も有効です。
当院での炎症性腸疾患に対する治療
当院にも、潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さんが大勢通院されています。病状が悪化した場合には、インフリキシマブ(レミケード)やアダリムマブ(ヒミュラ)などの抗TNFα受容体拮抗薬、タクロリムスやアザチオプリンなどの免疫調整剤、白血球吸着除去療法(GCAP)などを組み合わせて積極的に治療しています。しかし病状が薬の治療で改善しない場合には手術治療が必要となることがあります。腸の切除や肛門手術などの手術治療も当院にて行っていますので、炎症性腸疾患に対する治療のほとんどを当院にて行うことが可能です。
また炎症性腸疾患の患者さんは定期的に大腸内視鏡検査を受けて頂く必要がありますが、当院の特徴としては大腸内視鏡検査の際に鎮静剤の使用することにより、眠っている間に楽に検査を受けることが可能です。